教授
坂田 一郎

技術経営戦略学専攻のめざすもの

20世紀は、自然科学のあらゆる分野で飛躍的な発展が見られ、技術が多方面に展開した時代となりました。そして、これらの科学と技術の革新によって、人類の活動範囲は桁違いに拡大し、社会は姿を変え、そして、人類はかつてない大きな力を得ることとなりました。

一方で、現代社会を支える基本的な仕組みの限界も露わになってきています。地球環境の劣化、資源の枯渇、社会の分断といった地球規模の課題はより顕在化し、また、世界情勢はより不安定になってきているようにも感じます。より大きな力を得た人類がどのようにして、安定で平穏な社会を構築するのか、その道筋は明らかにはなっていません。多様な人々が尊重しあいながら協力して経済を駆動する新たな仕組みを生みだすことが求められる時代に入ったと考えられます。この新しい仕組みを駆動するものは人々の知恵に他なりません。すなわち、知恵が経済を動かす社会です。そこに移行できるのかどうか、人類社会は今、分岐点に立たされています。日本には、アジアの先進国として、それを先導する歴史的責務があり、「知の協創の世界拠点」を掲げた東京大学は、それに関して中心的役割を担う立場にあると考えています。

技術経営戦略学専攻は、その設立時に、企業経営における技術の活用を論じる等の狭い意味での技術経営から脱却し、「国家・社会における技術の価値を論じる」あるいは、「社会や産業の発展における技術の活用や価値の発揚を論じる」という拡大的な解釈によって、TMIという新しい学問の地平を切り開いていくという目標を掲げました。これを踏まえ、教育においては、技術、経済・経営、社会にまたがる多様なカリキュラムや海外研修の機会を提供するとともに、国際的な環境の下で、社会の課題解決も視野に入れた領域横断的な研究活動を進めています。今後、本専攻は「知の協創の世界拠点」を掲げる東京大学の中で、先に述べたように限界が見えた現代社会の仕組みに代わる次世代の仕組みを構想することや、世界的な視野を持って知の協創を主導する知のプロフェッショナルを育成する役割を担うことを目指していきます。

2006年に設立された本専攻は、今年ちょうど設立10年を迎えます。この間、巣立っていった多くの卒業生が、既に、多様な分野でグローバルに活躍をしています。学問への興味と行動力とを持ったみなさんに、この新たな学問の扉をひらいていただくことを期待しています。

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