教授
古田 一雄

技術経営戦略学専攻のめざすもの

日本の第5期科学技術基本計画で「Society 5.0 の実現」が掲げられ、予算化のために具体的研究テーマが検討されています。これに必要となる基盤技術としてはIoT、ビッグデータ、AIなどが、実現すべきシステムとしてエネルギーバリューチェーン、高度道路交通システム、新たなものづくりシステムなどが例示されています。しかし Society 5.0を標榜するからには、高機能、効率、経済性などの従来の価値観に沿った技術革新の延長に終るべきではなく、これまでの社会が抱える問題の克服を目指すべきと考えます。

Society 5.0 によって実現されるべき価値としては、まず公共性があげられます。Society 5.0 の恩恵は一部の国や企業、ステイクホルダーにのみ及ぶものではなく、広く国民全体、あるいは世界の人々の安心で豊かな暮らしに貢献しなければなりません。技術経営戦略学(TMI)は企業における技術の価値だけでなく、国家や社会における技術の価値を高め、公共政策に貢献することを目指しています。

つぎに、これからのボーダレス化する世界においては寛容性がますます重要になるでしょう。寛容な社会とは、異なる属性、指向性、文化を持った人々が互いを尊重しながら共生できる社会であり、Society 5.0 はそのような社会であるべきです。最近言われる多様性(diversity)とは、この寛容性を達成するための手段に過ぎないことを認識すべきでしょう。TMI 専攻はさまざまな専門分野のバックグラウンドを持つ教員や学生、多数の留学生が集い共同作業を行う場として、寛容性を磨くのに適した環境を提供しています。

最後に、複雑な現代社会は自然災害、技術の欠陥、地政学的リスク、パンデミック、経済的混乱などのさまざまな脅威にさらされています。人々が現在よりも安心して暮らせるために、Society 5.0 はこれらの脅威に対する抵抗力や、脅威によるダメージからの強靭な回復力を有し、持続できるものでなければなりません。このような能力をレジリエンスと呼びます。TMI 専攻では、技術とマネジメントを駆使して社会のレジリエンスを高めるための教育研究を行っています。

このように、Society 5.0 が実現すべき、公共性、寛容性、レジリエンスの3つの価値に対してTMI 専攻は深くコミットしており、Society 5.0 をリードする人材として将来活躍するために、TMI専攻で学ぶことはよい選択であると言えます。未来社会を切り拓くチャレンジへのみなさんの参加をお待ちしています。

Copyright(C) 2005 Department of Technology Management for Innovation, The University of Tokyo. All Rights Reserved